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279号 「国民投票法の主な内容、論点について」

国民投票法は与党案が成立することは確実であるので、野党から寄せられた反論などに触れながら、与党案の主要点について解説することにする。

まず国民投票の対象についてである。

与党案は憲法改正についてだけの国民投票にしているが、憲法96条を受けての国民投票法であるので、至極当然のことである。これに対して民主党は、この法律に憲法改正についての国民投票に加えて、一般的国民投票なるものを盛り込もうとした。曰く、憲法の他、国政上重要な案件についても国民投票に付することを制度化しようというアイデイアである。民主主義をすすめるという観点から良いことのように一見受け取られる可能性があるが、このような制度を導入したら、現行の代議制を大幅に変更することになる。すなわち重要な案件については国民の直接の投票で決め、重要でない案件についてのみ国会で決めるということになるから、国会議員の役割の大幅縮小である。

さすがに民主党案の提出者もだんだん後退して、憲法に直接関係する案件に限り、しかも国民投票に付した結果も最終決定ではなく、国会で議決する際の参考にするにとどめるということにしてきたが、住民投票などの例でもわかる通り、住民投票の結果と異なる決定を市長がすることは不可能であるので、一般的国民投票の場合も、その結果と異なる決定を国会が出すことは実際問題として不可能であろう。実質的な代議制を否定する考えであり、いわゆるポピュリズム政治の横行を促進してしまう危険がある。従ってこれは絶対受け入れることはできないのである。

更に国政上重要な案件とは何かというやりとりの中で、例示としてよく引用されてきたのは皇室典範であったが、皇室の有り方を決めるのが一般の法律と同格の法律でいいのか、国民投票によって直接国民がきめるのが当然ではないかという主張である。

皇室のあり方を国民投票できめるような制度を導入してしまったら、我が国のあり方の根幹をなしてきている天皇制を国民が否定する可能性が生じてしまう。つまり日本が日本でなくなってしまう可能性が出てきてしまうのである。例えば例の「ホリエモン」が講演などで、自分は日本を共和制国家にするのがいいと思っているなどと述べているのである。

国のあり方など基本的問題の決定を国民投票で決めるような制度を導入してしまうと、国の将来を誤らせることになる危険があるのである。かなり多くの一般国民はものごとを深く考えないで結論を出してしまう傾向は否めない。その時の雰囲気のようなものに流されてしまうのである。ここに正に最近のポピュリズムに訴える政治の傾向が見られるのである。皇室のあり方などの判断をポピュリズムに委ねることなど到底できないと確信する。

次に度々出されている最低投票率の問題に触れたいと思う。

ある一定の投票率に達しない国民投票の結果は無効とするという考えである。これも一見もっともな主張のように感じられるが、この主張をしているのが、共産党と社民党だけであるということに注目する必要がある。民主党はこの主張をしていない。このことでも明らかな通り、最低投票率を決めることによって、国民投票の際、大々的なボイコット運動を展開して、憲法改正、特に9条関係の改正を阻止しようという思惑が見え見えなのである。この点からしても最低投票率を決めることはしてはならないが、更に理論的にも、現憲法96条にはこの点については何もふれていないことでもあるので、もし最低投票率を導入するなら、憲法改正が必要であるという説が有力である。

さらに付け加えれば、最低得票率を決めるということは、投票率が低いことを想定している議論であるが、日本国民が憲法改正という国家としての最重要事項に関する賛否の投票において、投票率が低いことを想定するということは、日本国民に対する侮辱ではないか。日本国民の民度はそんなに低くないと思う。

次に国民に対する判断材料の提供の問題がある。

新聞、テレビなどの利用についての基準をどうするか、改正原案を国民投票に付してから投票までの期間をどうするかといった問題についていろいろな議論があった。詳細な内容はここでは省略するが、これらの議論の暗黙の前提が、改正案が国民に提示されてはじめて国民がその内容を知るということになっている。

憲法改正はまず国会で議論され、その結果、衆参両院で三分の二の賛成を得て改正案ができるのであるが、そこに至るまでの国会での議論の様子が常に国民に知らされていれば、国民投票に付された時点で既に国民は改正案の内容についてかなりの程度承知していると思われる。改正案が国民投票に付されてからの周知方法を考えるより、国会での議論を如何に国民の前に明らかにするかを考える方が重要であると思う。NHKによる国会のテレビ中継は、予算委員会を中心に、ごく限られているのが現状であるが、憲法に関する議論が行われることになる新設の「憲法審査会」の模様は、原則として全部テレビ中継するようにすることが大切ではないか。公共放送であるNHKの義務だと思う。

この他にも、投票年齢を20歳にするか18歳にするかで議論があった。最終的には民主党の主張を入れて修正与党案では18歳になっている。しかし日本では成人年齢を20歳としているので、民法や公職選挙法などとの整合性を整えるためにこれらの改正作業を早急に進める必要が出てきた。尚、これらの作業が終了する前に国民投票が行われることになったら、20歳以上のものが投票権を持つことになっている。

尚、この手続き法の議論の最中、盛んに安倍総理の憲法改正に関する発言が問題視されたり、立憲主義とは何かといったそもそも論が出されたりしたが、こういった事柄はむしろこれから「憲法審議会」で議論されるべき課題で、手続き法の議論の段階で議論するテーマとは言いがたい。

審議を出来るだけ遅らせて、あわよくば今国会で廃案にしたいという参議院選挙を睨んだ政局がらみの思惑がみえみえであったことを申し添えておきたいと思う。